スピン・エレクトロニクスグループ
マグノニクス

ナノ構造磁性材料や磁気現象などのスピン工学分野を中核にして、光や高周波電磁界、超音波や熱、電子伝導などとの協調現象を巧みに利用した基礎から応用にわたる研究を行っています。

高磁歪材料探索

 私たちの研究室では、ホログラフィックメモリへの応用を目指してMOSLMを開発しています。 従来のSLMを大きく上回るスイッチング速度を持ったMOSLMは、ホログラフィックメモリの核として 非常に重要なものです。
 MOSLMには電流駆動型と電圧駆動型があります。電流駆動型についてはすでに開発に成功しており、 現在は電圧駆動型の開発を行っています。電圧駆動型は電流駆動型より消費電力や発熱が少なく、是非実用 化したいMOSLMです。
 磁性ガーネット等の透明磁性材料を磁化し、そこに光を通すと偏光面が回転するという現象 (ファラデー 効果)が起きますが、MOSLMではこの現象を利用して光のスイッチングを行います。すなわち、磁性ガー ネットの磁化をコントロールすることで、光の偏光面の角度を自在に操り、スイッチングとするのです。 通常、磁化のコントロールには外部磁場を利用しますが、電流駆動型MOSLM(v-MOSLM)では 逆磁歪効果を利用します。

Fig. 1 電圧駆動MOSLMの概略図。圧電材料と磁性ガーネットの間には、
電極兼光反射膜のアルミ・プラチナ等を成膜します。
  1. 圧電材用に電圧を加える
  2. 圧電材料が変形し、周囲に応力を発生させる
  3. 磁性ガーネットに応力が加わる
  4. 逆磁歪効果によって磁性ガーネットの磁化が変化
  5. 磁性ガーネットを通った光の偏光面が変化

 という過程を経て、電圧による光のコントロールが可能になります。 ちなみに、外部磁場によって磁化をコントロールしているものが、電流駆動型のMOSLMです。
 以上のように、逆磁歪効果を利用して磁化をコントロールするv-MOSLMですが、磁化コントロールの効率は、 磁性ガーネットの磁歪定数に大きく影響されます。磁歪定数が大きいほど、応力が磁化に及ぼす影響も大きいのです。 そこで、v-MOSLMの効率的な駆動のために、大きな磁歪定数を持った磁性ガーネットの研究 (ガーネットの高磁歪化)を行っています。
 現在までの成果として、代表的な磁性ガーネットであるビスマス置換イットリウム鉄ガーネット (Bi:YIG) にジスプロシウムを導入することで磁歪定数を-3.2 ppmにすることに成功しています。これは、以前試作 した電圧駆動MOSLMで利用していたイットリウム鉄ガーネット (YIG) の 約3倍の値です。

Fig. 1 電圧駆動MOSLMの概略図。圧電材料と磁性ガーネットの間には、
電極兼光反射膜のアルミ・プラチナ等を成膜します。

「磁歪」

 磁性体に対して磁界を印加すると、磁性体が磁化されると共に外形が歪む現象。 逆に、磁性体を外部からの力によって歪ませることで内部の磁化をコントロールすることもできる。 この現象を逆磁歪効果(ビラリ効果)と呼ぶ。

「磁気光学空間光位相変調器」 (Magneto-Optic Spatial Light Modulator :MOSLM)

 液晶・DMD(Digital Mirror Device)に代表される空間光変調器(SLM)の一種。 光の変調に磁気光学効果を利用するため原理的に高速(~ns/pixel)であり、ホログラム記録や光交換機等への 応用が期待されている。