スピン・エレクトロニクスグループ
マグノニクス

ナノ構造磁性材料や磁気現象などのスピン工学分野を中核にして、光や高周波電磁界、超音波や熱、電子伝導などとの協調現象を巧みに利用した基礎から応用にわたる研究を行っています。

磁気光学空間光変調器

 磁気光学空間光変調器(Magneto optic spatial light modulator: MOSLM)は磁気光学効果であるファラデー回転を用いて、 光の偏光方向を変えるmagneto-optic変換を行うデバイスです。 ファラデー回転は磁化された磁性体中を通る光が偏光面を回転させる現象です。 磁性体が磁化されたとき、磁化方向に一軸異方性が生じ、右円偏光および左円偏光それぞれに対する屈折率が異なることから引き起こされます。 MOSLMでは磁性体薄膜の2次元配列された任意のピクセルの磁化方位を制御することで透過光への変調を行っています。 MOSLMの特長は、以下の通りです。

  • ピクセルのスイッチングスピードが速い
  • 固体デバイスであり、堅固である
  • 不揮発性
  • 耐放射能性が高い

 MOSLMは光のON/OFFを、数10nsによる磁化方向のスイッチングでできるため高速駆動が可能です。 また電源をOFFにしても磁化の方向は保持されるため不揮発性です。 この高速光処理能力から、MOSLMはホログラム光体積記録や3次元ディスプレイといったシステムを実現できるデバイスとして期待されています。

Fig. 1 MOSLMスイッチングイメージ。磁性体の磁化方向によって光のON, OFFが行える。(左)
磁性体をピクセル化したMOSLMデバイス。磁化方向の違いにより濃淡がはっきり分かる(右)

「電流駆動型MOSLM (i-MOSLM)」

 電流駆動型MOSLMは、ガーネットピクセルの磁化反転を電流による誘導磁界により行う方式です。 ピクセルをスイッチングさせるには、交差するX, Yドライブラインに電流を印加し、 2つのドライブラインが重なるピクセルで電流による強い磁界が発生し磁化が反転されます。 磁界による磁化反転は、2つのドライブラインが交差する点でのみ生じるため、ピクセル一個単位で制御できます。

Fig. 2 電流によるピクセル反転のイメージ

「電圧駆動型MOSLM (v-MOSLM)」

 電圧駆動型MOSLMは磁性体の逆磁歪効果を利用したMOSLMです。 駆動方法は、初めに全体のピクセルの磁化を外部磁界によって一方向に整列させます。 続いて目的のピクセルのドライブラインに電圧を印加し、 ガーネット上に積層された圧電層によって目的のピクセルにのみ応力を印加します。 圧電層によって加えられた応力は、ガーネットの逆磁歪効果により磁界Heffとなります。 この応力によって、磁気異方性が変化し、ピクセルの保磁力が減少します。 よって応力を印加したピクセルは他の応力を印加していないピクセルよりも容易にスイッチングが可能となります。

Fig. 3 電圧によるMOSLM駆動の原理図